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ハーレーのエンジンの歴史~ミルウォーキーエイト編~

ハーレー ミルウォーキーエイト

ハーレーダビットソンが設立して約120年。伝統のV-twinエンジンが誕生して115年。
時代の変化や革新を経て、長い歴史とともに誕生した数々のエンジン。

ハーレー ミルウォーキーエイト

・ATMOSPHERIC V-TWIN(1909年)

・Fヘッド(1911~29年)

・フラットヘッド(1929~72年)

・ナックルヘッド(1936~47年)

・パンヘッド(1948~65年)

・ショベルヘッド(1966~84年)

・エボリューション(1984~99年)

・ツインカム(1999年~2016年)

ハーレー ミルウォーキーエイト

その第9代目として誕生したのが「ミルウォーキーエイト」。


2017年モデルから搭載され、現時点でのハーレーダビットソン社最新エンジンです。
また、ツインカムの時には途絶えていたシングル カムシャフト構成へ回帰したエンジンでもあります。

名前の由来

「ミルウォーキーエイト(Milwaukee-Eight)」

名前の由来は、ハーレーゆかりのアメリカ ウィスコンシン州ミルウォーキーの地名と1シリンダー内にバルブが4つ搭載しており、それがツイン(×2)で “8(Eight)”であることの組み合わせとなっています。

ハーレー ミルウォーキーエイト

誕生まで

ハーレー ミルウォーキーエイト

新たなエンジンの開発のためにハーレー社が必要としたのは、世界各国、あらゆる地域のハーレーユーザーからの声でした。

そこでハーレーダビットソン社は、大規模となる世界7都市の1000人以上のユーザーに、次のラインナップに何を期待するかという内容ののインタビューを実施。

その際にあがってきた主な答えが、

・パワーの向上 ・熱の低減 ・振動の低減

というもの。

これらにツインカムエンジンで見えた改善点を加えたものを基本原則として、ハーレー社は新しいエンジンの開発に着手。 そうして誕生したのが「ミルウォーキーエイト」エンジンなのです。

エンジンの特徴8ヶ所

ハーレー ミルウォーキーエイト

ツインカムからミルウォーキーエイトに変わり、大きな特徴としてが挙げられるものがあります。

その主な内容がこちらの8つ。

➀4バルブ×2気筒

2つのシリンダーヘッドそれぞれに2つのバルブが設置され、4バルブ×2気筒形式に。

これにより2つのバルブによる浅いリフト量(=少ない動き)でも効率よく大量の吸気が可能となったほか、

・トルクの10%増加 ・燃料効率の向上 ・高回転域の負担の軽減など、

高回転でもロスなく効率的にエンジンを可動させられるようになりました。

➁カムシャフトの1本化

前エンジンであるツインカムのシャフト2本仕様から1本仕様に回帰。

カムシャフト2本の場合、高回転時にパワーが出ますが、部品点数が多くなり、故障のリスクが高くなっていました。再び1本にしたことにより、シンプルな構造となり、結果ノイズや故障リスクの低減につながりました。   

➂プラグ2本×2気筒

年々厳しくなる環境規制。ハーレー社はプラグを2本にすることで、燃焼室内の混合気の効率をアップ。広範囲にガスを効率よく行き渡らせるようにし、素早く燃焼させ、排気をクリーンにすることで規制へ対応。

他にも

  ・エンジン内にカーボンが残らない ・ノッキングを防止できアイドリングが安定 ・中低速のトルクが増し加速が良くなる

というメリットが追加されました。

④バランサーを標準搭載

ツインカムエンジンがバランサー搭載のものと非搭載のものがあったのに対し、ミルウォーキーエイトはすべてバランサー搭載のエンジンとなります。

またフライホイールの前後に搭載されていたバランサーが、”前側”だけに設置されるという仕組みに変わったことも特徴のひとつ。 ※ソフテイルファミリー用のミルウォーキーエイトは、前後に搭載されています。

これにより振動の75%を打ち消し、残りをラバーマウントで吸収。心地よい振動だけを残したエンジンとなったのです。

⑤エンジンオイル量の拡大

ミルウォーキーエイトエンジンはツインカムに比べ、

  エンジンオイルが、4クオート(約3.78L)→ 4.5クオート(約4.25L)に増加。

これは走行風だけでなくオイルでもエンジンの冷却ができるよう、エンジンの排気バルブ周りにオイルラインができた事によります。そのためミルウォーキーエイトは非ツインクールドがスタンダード。オイルポンプも強化され、部分的な機構的には油冷エンジンに似た構造となっています。

⑥発電系統の刷新

発電系統の刷新が行われ、アイドリング時の発電量が50%アップ。それにともないアイドリングの回転数を下げることができ、エンジン自体の熱量を抑えることが可能となりました。

それだけでなく、スマートフォンなどの充電にも対応でき、現代のモバイル機器の利用状況に合わせた改良がなされています。ロングツーリングの際にも電源に困ることはありません。

⑦アイドリング時のエンジン回転数が低回転化

ツインカム時の1000±50回転がミルウォーキーエイトでは850回転に。回転数が下がったことで、よりハーレーらしいサウンドを取り戻すことに成功しました。

またキャタライザーの位置がマフラーエンド側に移動したことにより、ライダーが感じるエンジン熱も抑えられる構造へとアップグレード。

⑧新設計フライホイール搭載やオイルポンプの強化

新設計のフライホイールを搭載し、ハーレーの鼓動感と低速トルクがより体感できるように。

さらにオイルポンプが強化されたことにより、多くのオイルが流れるようになり、エンジンの焼き付きや冷却に効果を発揮します。

パワーアップを続ける排気量

2017年のミルウォーキー107/114の登場から約7年。

排気量は今までに2度引き上げられており、その度にヒーローモデルとなる車両が誕生しています。

ハーレー ミルウォーキーエイト

●ミルウォーキーエイト107(排気量1,745cc)

2017年にツインカムに次ぐエンジンとしてデビュー。多くの改良が加えられたモデルとして、またハーレーダビットソンの伝統的な空冷Vツインでのパワー・パフォーマンス・イノベーションを実現すべく設計されたエンジン。かつての名車を彷彿とさせる古き良きシルエットを持つ「FLHR ロードキング」が人気に。

ハーレー ミルウォーキーエイト

●ミルウォーキーエイト114(1,868cc)

ミルウォーキーエイトが登場した2017年デビューの時の「CVO Limited」と「CVO FLHXSE ストリートグライド」というハイランク車両専用のエンジン。2021年にはダイナファミリー時代から多大な人気を誇っていたストリートボブに搭載された「FXBBX ストリートボブ114」がデビューした。

ハーレー ミルウォーキーエイト

●ミルウォーキーエイト117(1,923cc)

2022年モデルのローライダーS、ストリートグライドSTなどに加え、最上級モデルCVOなどの計8モデルに搭載されたエンジン。なかでも注目されたのが、「FXBR ブレイクアウト117」。CVOにも引けを取らない装備と乗り味にマイナーチェンジしたモデルであり、今なお人気の1台。

ハーレー ミルウォーキーエイト

●ミルウォーキーエイト121(1,977cc)

2023年モデルの新型CVOであるストリートグライドとロードグライドにはじめて搭載された。2024年も「CVOロードグライドST」のみ搭載されるなど、現存するハーレーエンジンの中で最高クラスに位置するスペシャルなエンジン。

ミルウォーキーエイトエンジンのこれから

ハーレー ミルウォーキーエイト

先日発表がありました2024年の新型の中のその最上級モデルには、ミルウォーキーエイト121が搭載され、排気量1,977ccと過去に類を見ないパワーを誇っています。

今までのエンジンを振り返っても、歴史が浅いモデルではありますが、まだまだ発揮されていないであろうポテンシャルに期待がふくらみます。

ここからモーターサイクル業界にどのような影響を与え、どのような存在になっていくのか。今後の躍動が楽しみです。

おわりに

ハーレー ミルウォーキーエイト

少しずつ振り返ってきたハーレーダビットソンのエンジンの歴史。

120年。

やはり積み上げてきたものは伊達ではありませんでした。

今まではどうしても、自分の乗っているエンジンが主な興味の対象でしたが、今回を経てさまざまな年代のハーレーにも関心が湧き、視野や得たい知識の幅も広くなりました。

それのおかげか、それのせいか、欲しいハーレーが増えてしまいましたが...。

  
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