ハーレーのエンジンの歴史~ショベルヘッド編~

ハーレー ショベルヘッド

ハーレーダビットソン生誕150年と進化してきたエンジンのおはなし。その歴史を紐解いていく特集も4回目となりました

今回のお題は、ハーレーのヴィンテージエンジンの中で今なお多くの方に愛用されている「ショベルヘッドエンジン」について。

ヴィンテージに分類されるハーレーのエンジンの最後のモデルになるのでしょうか?個人的にも大変親しみがあるエンジンになります。

ご一読いただければ幸いです。それではどうぞ。

製造期間と名前

ナックルヘッド、パンヘッドに次ぐ、ハーレーダビットソン社の第三世代のOHVとして開発されたショベルヘッドエンジン。

製造期間はビッグツインモデルが1966年~84年までの18年間。スポーツスターモデルのアイアンショベルを含めると1957年~86年までのトータル29年間の長期となります。

毎回ユニークなハーレーのエンジンのネーミングですが、ショベルヘッドの名前の由来はスコップのショベルから。正面からはちょっとわかりにくいですが、上から見てみると「あ~なんとなくスコップっぽい」くらいは思えるはず。歴代のメカメカしいカッコよさと造形美はしっかりと引き継いでいます。

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2形態のエンジン

ショベルヘッドエンジンは進化の中で2形態+αが存在します。

2形態のエンジン

●第1形態:1966~1969年製造の「アーリーショベル(ジェネレーターショベル)」

前世代のパンヘッドのクランクケース(カムカバーの表面のフィンがなくなりツルツルに変更されてますが)に新設計のシリンダーヘッドを組み合わせたハイブリッドエンジン。

発電方法が直流発電を採用しているため別名ジェネレーターショベルとも呼ばれています。

パンヘッド製造終了後はトラブルがあると、互換性のあったショベル用のシリンダーヘッドに積み替える修理が行われ、そのエンジンは「パンショベル」と呼ばれました(これが+α)。見た目に違いはほぼありませんが、純正出荷のアーリーショベルとは別ものとして差別化が図られています。

2形態のエンジン

●第2形態:1970~1984年製造の「コーンショベル(オルタネーターショベル)」

ポイントコンデンサーとガバナーがクランクケース内に収まる形に縮小・軽量化。それに伴いカムカバーも変更され、その形状から(とうもろこしではなく円すいの意味で)コーンショベル、またはコンショべと呼ばれています。

発電方法が交流発電に変わり、別名オルタネーターショベルと呼ばれることも。

排気量が1200ccから1340ccへとパワーアップしたのもこのエンジンの時になります。

パーツなどを探すとビッグツインモデルは84年までしか存在しませんが、実は1985年に製造されたFLHXというモデルのショベルもあります。黒塗りのクランクケースが特徴で合計920台、日本では47台しか販売されなかった幻のモデルです。

排気量のパワーアップ

ハーレー ショベルヘッド

当時、アメリカのモーターサイクル業界全体に浸透し、問題となっていた個人によるカスタムマシンの増加。見た目重視でフロントブレーキをなくしたり、パーツを外して軽量化を図るなどの危険性から、アメリカ政府はメーカーに対して安全向上の規制を打ち出しました。

左シフト、ウインカーの装着を義務化し、他にもフレームの強化規制などを実施。安全のための装備・加工が増えることになり、結果、車体の重量化が進んでいったのです。

こうなると必要となるのは、重たい車両を動かすためのさらなる馬力。パワーです。そこでハーレー社は1200cc以上のエンジンの開発に着手し、1978年のFLHエレクトラグライドから1340ccのエンジンを搭載。ハーレー全体のパワーアップが実現されました。

そして、これを機に翌年からハーレーダビットソンのニューモデルラッシュが始まります。

<発表されたニューモデル一覧>

・1979年 FXS(1340cc)(ローライダー)

・1979年 FLHC (エレクトラグライド)

・1979年 FLT (ツアーグライド)

・1979年 FXEF (ファットボブスーパーグライド)

・1980年 FLHS (エレクトラグライド)

・1980年 FXB (スタージス)

・1980年 FXWG (ワイドグライド)

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このニューモデルラッシュの影響によりハーレーの販売台数は1969年のAMF社買収時(※)15,000台程度だったのに対し、50,000台を超えるまでに回復。1981年のAMF社からのバイバック(株式買戻し)につながりました。

※ハーレーダビットソン社は1969年に経営不振の理由からAMF社(アメリカン・マシン・ファンドリー社)に買収され、傘下として経営していました。タンクなどのエンブレム部分の「AMF」の文字がある車両はこの時代のもの。

FXモデルの誕生

ニューモデルラッシュの中でもハーレーダビットソン復活の起爆剤となったのが”FX”と呼ばれるモデル。

ショベルヘッド以前に製造されたビッグツインは前後16インチのツアラーモデル“FL”系のみ。そこでハーレー社が新たに設定したのが、カスタムを目的としたユーザーをターゲットにした市場の拡大でした。

その時に開発されたのが”FX”モデルです。

FXは、FL系(ツアラー)のボディにXL系(スポーツスター)のフロントフォークを取り付けており、FL系のようなどっしりと構えた雰囲気ではなく、かといってXL系のような身軽さがあるわけでもない。どこか優雅でスポーティーな、現代で言うならチョッパー味の印象を受ける革新的な構造をしたハーレーでした。

結果、主力モデルであったFLHに次ぐ生産台数をほこるようになり、新たなカテゴリーとしての地位を確立。ハーレー社初のファクトリーカスタムマシンとして、さまざまな派生が生まれるきっかけとなったモデルとなりました。

ここではFXの代表的な2モデルをご紹介しましょう。

FX Super Glide

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製造年 排気量 圧縮比 馬力 電圧 燃料容量 最高速度
/ 1971 1200cc 8.1 65 12V 3.5ガロン 177㎞/h

当時、ヨーロッパのカフェレーサーが幅広く受け入れられていたことで開発がスタートし、その特徴あるシートの形状から「ボートテール」という愛称で呼ばれていました。しかし見込まれたほどのリアクションがなく、短期間で姿を消すことに・・・。

シートの他にも、“スパークリング・アメリカ”という白ベースに青と赤のラインが入った車体のペイントやロゴ、ポイントカバーなど、このモデル専用のパーツが数多く存在するスペシャルなハーレー。現代では逆にそのデザインや希少価値から人気を高め、入手困難なレアな1台となっています。後のローライダーやワイドグライドの源流となるモデルです。

FXS LOW Rider

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製造年 排気量 圧縮比 馬力 電圧 燃料容量 最高速度
/ 1977 - 1984 1200cc(~1978) → 1340cc(1979~) 8.1 65 12V 3.5ガロン 161㎞/h

Super Glideの流れを汲んだモデルで、カスタム市場で絶大なる支持を得た車両。

エンジンにブラックペイントを施された初のモデルであり、ガンメタグレーのタンク色、タイマーカバーを包み込むように配されたリアのエキパイと2イン1のマフラー。低層のハンドルバーと従来よりも27インチ(68.6cm)下げられたシートのLowなビジュアルが人気となりました。

初年1977年には3,742台。翌年1978年には約2.5倍以上の9,787台まで出荷。爆発的に売り上げを伸ばしました。

関係が悪化していたAMF社との将来に希望の光を差した車両であり、現在のハーレーダビットソンが存在するのはこのFXSがあったからと言っても決しておおげさではありません。

最後に

今回のショベルヘッドの特集はいかがでしたでしょうか?

これをお読みの方の中には、当時現行車としてショベルヘッドを購入された方もいらっしゃるかもしれません。ヴィンテージとして扱われるのは心外だなと思われたなら、大変失礼をいたしました。

しかし若輩者の自分にとって、約60年前にデビューしたショベルヘッドのハーレーがいまだ現役バリバリで日本の道を走行する姿には、尊敬と感動でしかないのです。

当店にもショベルヘッド対応のパーツがあります。いつでもご協力致しますので、定期的なメンテナンスを行いつつ、これからもハーレーと一緒に歳を重ねながら走り続けていただきたいと思います。

それでは、今回はこの辺りで。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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