ハーレーのエンジンの歴史~エボリューション編~

ハーレー エボ

ハーレーOHVの第4世代として誕生したエボリューションエンジン。通称“エボ”。

「重い・遅い・壊れる」といった風評が流れていた1970年代後半のハーレーダビッドソン社。

今回振り返るこのエボリューションエンジンは、ハーレーの失墜したブランドイメージの汚名返上のために開発されたエンジンであり、当時アメリカを席巻していた日本製のバイクに対抗するため、徹底した生産管理体制のもと生まれたエンジンでもあるのです。

製造期間と名前

製造されたのは1984年~99年までの15年間。

ブロックを積み重ねたようなヘッドカバーの見た目からブロックヘッドエンジンと呼ばれていましたが、あまり浸透しませんでした。

発祥は不明ですが、世間的に呼ばれたエボリューションまたはエボの呼び名が定着し、現在に至ります。

シリンダーヘッド

エンジン構造

OHVとは

ショベルヘッドまではロッカーアームがヘッドの内側にしまい込まれていたため、メンテナンスなど1回ごとにヘッドを丸ごと外す必要がありましたが、

エボのヘッドでは、上のカバーを外せば、アーム周りが出てきてメンテンナンスが容易に。過去のパンヘッドの構造を踏襲する形となりました。

※初期モデルではオイル漏れする場合もあったようですが、ガスケットの進化により解決。

また同じくショベルヘッドまではシリンダーやヘッドの各パーツをそれぞれボルトでつないでいましたが、

エボからは貫通ボルト(スタッズボルト)でケースとシリンダーをつなぐ方式に。さらなる簡略化が実現されました。

エボバッシング

ハーレー エボ

ナックル → パン → ショベルと今までは前のエンジンの型を継承しつつ進化していたのに対し、エボはショベルまでの角々しさ・メカメカしさや古めかしさを微塵も感じさないモダンなデザインとして売り出されました。

加えて、乗り味も見た目同様、角が取れ、独特の荒々しい加速フィーリングは抑えられマイルドなものに。

賛否両論を呼び、「エボバッシング」と呼ばれる現象を引き起こした歴史があります。

シリンダーヘッド

大衆に受け入れられたエンジン

ハーレー エボ

それまでの「ハーレー=壊れる」というイメージを、さまざまなアイデアや技術力を持って、エボエンジンが払拭していった事も事実です。

ショベルヘッドまでが鋳鉄とアルミが入り混じったエンジンだったのに対し、エボはオールアルミ素材として開発されました。 このアルミという素材を使った仕様により、シリンダーの軽量化や熱問題の解消などに成功。

またコンピュータ設計による耐久性や出力の面もショベルと比べて飛躍的にアップし、オイル漏れなどのトラブルの面の問題も激減しました。

それに加え、初期モデルで多発していたショベルからの共通パーツの流用による不具合の発生を、15年の間に着々と改良を進め改善。エンジン・フレーム・サスペンション・吸気系・電気系統と、ほぼすべての部分に改良が加えられました。

最終モデルになれば、ほぼ別物といっても良いくらいの進化を遂げ、これにより信頼を取り戻し、またパーツの簡略化や軽量化など、一般的にも扱いやすくなったことから世間のハーレーという乗り物への敷居を下げ、さらなる購買ターゲットを拡大させることになったのです。

数多く誕生したモデル

エボの特徴のひとつに、1999年の生産終了までに多くのモデルが誕生したことがあげられます。

過去のリジットモデルのようなフレームをもつソフテイルの登場にはじまり、ラバーマウントを使用したFXR、その進化系であるダイナグライドFXDなど、さまざまなフレームが開発され、フレームごとに異なるモデルが発売されていくことになりました。

ここではエボエンジン時代のハーレーの代表的なモデルを見ていきましょう。

FXST ソフテイル

ハーレーエボ

  • 1984

リアサス付きでありながら、1957年までのリジットフレームを模したモデルで、今も続く人気シリーズ。衝撃吸収機構を備えないハードテイルに対し、ソフトで快適な乗り心地であることから「ソフテイル」とネーミングされた。

FLST ヘリテイジ ソフテイル

UL

  • 1986

ウインドシールドやフォグランプを備えた豪華で重厚なフロントまわり、クラシカルなデザインのレザーサドルバッグ、オーソドックスなスポークホイールやディープフェンダーなどノスタルジックなスタイル。パンヘッド時代のスタイリングを彷彿とさせた外観で当時のライダーを魅了した。

FXST ソフテイル・スプリンガー

UL

  • 1988

ヨンパチ以来、途絶えたスプリンガーフォークを現代に蘇らす。剥き出しのスプリングと2本のフォークレッグからなるオールドスタイルのサスペンション機構を新型に採用したことで、驚きとともにそのアイデアと技術力が、業界に称賛の嵐を巻き起こす。

FLSTF ファットボーイ

WL

  • 1990

前後ディスクを装着し、外装からフレームまで塗装されたシルバーと部分的に入るイエローラインが特徴的なスタイルを持つ。1991年公開の映画「ターミネーター2」でアーノルド・シュワルツェネッガー氏が乗るモデルとしても、当時話題を呼び大ヒットした。

FXDB ダイナ

Kモデル

  • 1991

FXRフレームをもとにエンジンを2点ラバーマウントする仕様として新開発されたダイナグライドフレーム。このフレームとともに復活したのがショベル時代の名作FXDBスタージス。ハーレー初のコンピューター設計であり、エンジン振動を吸収するフレームとして投入された。このFXDBの誕生を皮切りにダイナシリーズがスタートする。

ショートスパンで誕生し続けるモデルがエンジンの信頼性の回復の時期と相まって、世界中で大ヒット。

1990年にはソフテイルモデル全体の売上は24,000台となり、ビッグツイン生産台数44,000台の内の1/2以上を占めました。

エボリューションエンジンは経営危機に貧していたハーレーダビットソン社の立ち直りに大きく貢献し、同社は次の成長期を迎えることに。

そして1999年、1984年の誕生から15年間愛され続けたエンジンは、次世代のツインカム88エンジンにバトンを渡すことになるのです。

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