べーパーロックやフェード現象という単語を耳にしたことはありますか?
ハーレーなどのバイクに乗っていると耳にする機会はあったのではないかな?と思います。
べーパーロックやフェード現象については安全に大変関わることなのでもちろん教習所でも教えています。
このべーパーロックやフェード現象を習ったか否かは遠い昔のことで覚えていなかったり…しませんか?
いろいろな所へツーリングが多くなっているこの季節、山間部などへお出かけの際はアタマの片隅に入れておいて欲しいことになりますのでぜひご覧ください。
べーパーロック現象とは
べーパーロック現象とは、山間部の下りなどで制動を頻繁に繰り返すことでパッド内で発生した摩擦熱がピストンを通してブレーキフルードへと伝わることから始まります。
この摩擦熱が高温になるとブレーキフルードが沸騰し気泡が発生します。油圧をかけても(ブレーキレバーを握っても)その発生した気泡がつぶれるだけで油圧がキャリパピストンまで伝わらなくなりブレーキが効かなくなってしまいます。この一連の現象のことをべーパーロック、またはべーパーロック現象と言います。
べーパーロックのべーパーとはVapor(ˈvāpər)=蒸気・蒸発して出来た気体、という意味になります。
ブレーキフルードが摩擦熱でべーパー化(気体になり)しブレーキがロック(使い物にならなくなる)する、という意味です。
フェード現象とは
一方、フェード現象とはバイクのブレーキ(ディスクブレーキ、ドラムブレーキ)の摩擦材(ブレーキパッド、ブレーキシュー)を下り坂などで多用し過ぎる際に発生します。
べーパーロック現象と同じようにブレーキが効かなくなるので、現象としては同じように見えますが発生するプロセスが違います。
ブレーキの多様による加熱で耐熱温度を超えてしまうと摩擦材の素材となっているゴムや樹脂などが分解・ガス化し摩擦材とディスクローターやドラムの間に入り込み摩擦係数が低下しブレーキの効きが弱くなったり、効かなくなる現象のことを言います。
ディスクブレーキよりもドラムブレーキの方が熱が逃げにくい構造のためフェード現象が起き易く多用が想定される状況でのブレーキ操作にはより注意が必要になります。フェード現象のフェードとはfade(fād)=薄れる・しぼむという意味です。フェードアウトのフェードですね。
ディスクブレーキやドラムブレーキの効果が薄れる、弱まると理解することが出来ます。
公道でべーパーロックとフェード現象が疑われる場合
ベーパーロックもフェード現象も共に摩擦熱が原因でブレーキの効きが弱くなったり、または効かなくなる現象です。
スカスカーっと抜けたような感覚でブレーキの効きが悪かったり、焦げ臭い匂いに気づいた場合は、先ずは落ち着いて安全にハーレーを止められる場所を探し、現象が起きていない側のブレーキやエンジンブレーキを使い停車させることが肝心になります。
停車後はディスクローターやキャリパー、ドラム部分などホイールやドライブライン周辺は高熱になっている為、触らないようにして下さい。自然に冷却されて、ブレーキ機能が戻るのを待ちましょう。
この時に水などを掛けたりして冷却するような事は絶対にしないで下さい。熱された鉄(金属類)に水をかけると歪みや変形、亀裂の原因になりますので、自然に温度が下がり冷えるのを待ちましょう。
ディスクローターやキャリパーなどが自然に冷却されたらブレーキが効くかどうかを確認し、すぐに止まれる安全な速度で走行してみましょう。
少しでも異常がある場合は、冷却によって状況が改善されていない可能性やその他の故障も疑われます。
レッカーサービスなどを利用するように手配した方が賢明です。
べーパーロックかフェード現象が一度でも起きたフルードやブレーキパッド
一度でもフェード現象が起きたブレーキパッドやシューは表面の材質が変質してしまいます。
表面を研磨するか交換しましょう。
ブレーキが効くからといって点検もなしにそのまま使い続ける事は絶対に避けて下さい。
ベーパーロックを引き起こす原因としてはブレーキフルードが原因の場合が最も多いと言われています。
ペーパーロック後はパッドの研磨・交換以外にもブレーキフルードも合わせて交換するようにして下さい。
起こしたくないべーパーロックとフェード現象の予防法
- 下り坂でのエンジンブレーキの活用
- フェード現象やベーパーロック現象はブレーキを多用する峠や山道などの長い下り坂が続く場所で起きやすい現象ですので、対策としてはエンジンブレーキを積極的に使う事でブレーキにかかる負担を軽減させてあげる事が最も効果的です。特にタンデム(二人乗り)時にはより制動距離が長くなるため摩擦熱が発生し易く注意が必要です。
- ブレーキフルードの交換
- ブレーキフルードは性質上吸湿性が高いのが特徴です。 そのため、古くなったブレーキフルードは水分含有量が多くなります。水分含有量が多くなるとブレーキフルードの沸点が下がってしまいベーパーロック現象が起きやすくなってしまいます。 定期的(2年に一度程度)に新品のブレーキフルードに入れ替えるをお勧め致します。
- 放熱性の高いブレーキローターへの交換
- ドリルドディスク(穴の空いたディスク)にスリットが入ったタイプやウェーブディスク(外周が円形ではなく波状になったディスク)などの放熱性能の高いブレーキローターがあります。 ブレーキの制動力の向上にもなりますので山道やツーリング等のハーレーの使用頻度が多い方は交換することをお勧め致します。
今一度ブレーキ系点検をよろしくお願い致します
いかがでしたか?
加速すれば減速がもちろん必要です。それを担うのがブレーキの存在です。
加速を担当するエンジンは、その性能やサウンドがもてはやされる一方で、ブレーキは可哀想なくらいに地味な存在ではありますが…もしブレーキワイヤーが切れたら、もしブレーキ効かなかったら…。
どうしますか?
この夏のホラーですよ、リアルホラー。
そうならないためにも、きちんとブレーキ系もしっかり点検してみて下さいね。